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野崎 剛右 Koske Nozaki, リコーダー

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2015年 05月 26日

シックハルトの運指表における異名異音運指

17世紀末から18世紀、イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、イタリア、スペインなど各地で数多く出版されたリコーダーのための教本から、運指表の比較、研究を行っています。

今回は、アムステルダムで1720年にJ.Ch.Schickhaldt(シックハルト)によって出版された、"Principes de la flute"(リコーダーの原理)から、興味深い運指を紹介したいと思います。


シックハルトの運指表における異名異音運指_a0236250_2233116.jpg

シックハルトのg#2を、初めて見たとき、こんな運指は他に例がなく、間違えなのではないか思いました。
しかし、後にStanesby Jrが、"Anew system of the Flute a'bec, or Comon English Flute"(1732, London, リコーダーの新しいシステム)のなかで、テナーリコーダー用の完全異名異音の運指表中、
d#2に234567、e♭2に123456の運指を示しているのと同様に、
この音を異名異音で演奏する場合に、通常運指123456よりも低い音程を得る運指としてシックハルトはg#2に0h23456を採用したのではないかと考るようになりました。
シックハルトの運指表における異名異音運指_a0236250_22335683.jpg

実際、0h23456はサミングを伴い、234567よりもフレキシブルで、同じ程度ピッチを下げることもできるし、それよりも高く取ることも出来るので、これは実用的な運指です。
この運指表に関して、J.Hotteterre: Principes de la Flute~(1707)の写し間違いでは、という考えがよくなされるようですが、上記の理由から、単なる写し間違いとしては解決しにくい、というのが私の意見です。

実際に私が所有するいくつかのコピー楽器で試してみると、
Bressan、Stanesby Sr、この2つのロンドンの楽器では、123456は音程がもともと既に充分低いので、この運指をとる必要はありませんが、以前Bizey(パリ)のモデルを演奏していたときに、その楽器では、123456は逆に高い傾向にあったので、シックハルトの運指を採用して演奏しました。

このような実例からも、当時のオランダの楽器に同様の傾向のものが存在したのかもしれません。

野崎剛右
(随時更新)

※検証で使用した楽器は、木下邦人氏製作のオリジナル運指のコピー楽器と、いくつかのオリジナル楽器です。

by koske-p-nozaki | 2015-05-26 22:35 | リコーダーに関する話題 歴史的運指など | Comments(0)